ちくわ部
「だってよー、先輩が卒業しちゃって一気に野郎だらけになったのに今年は三人も女子が……そしたらもうこの手の話題しかないっしょ。俺としては気になるわけ」
頭をさすりながら、真崎先輩は独り言のように呟いた。
内容は極めて自分本位というか自らのものさしでしか考えていないようなものであるが、健全な高校生としてはこれが普通なのかもしれない。
いかんせん私の基準に自信がないというか、特に色恋沙汰はどうも一枚膜を張ったようにどうしても超えられない境界を感じて、うまく考えられなかった。
「でも普通異性には話さないと思うよー。それに、少なくともまるのことを気にしてる子は居ないと思うねぇ。なんてったってハルちゃんだもん」
ジン先輩はしれっと言い放つ。
真崎先輩は確かに中性的だ、色々な意味で。
それの対極に位置するルックスの持ち主である彼が言うと、それなりに威力を持つ気がする。
「くそっ! それがモテ男の余裕か! どうせイケメン長身野郎に低身長童顔女顔女名前の苦しみは分かるまい!」
真崎先輩は悔しさを全身いっぱいに滲ませながら、いつのまにか奪い取っていたうちわでジン先輩の頭をべしべしとはたきだした。
勢いよく振られているせいで、うちわはかなりしなってしまっている。
ここの部活には、うちわを本来の用途で使う人は居ないのだろうか。