ちくわ部
 
このままこの二人の漫才で今日は終わってしまいそうだなー……ある意味名コンビだ。いや迷コンビか?

とかそんなことを考えていた時、ふと塩田君はどうしてるだろうと思ってちらりと目線だけを移動させてみる。


無言で俯いて小刻みに震えていた。


これがチワワか何かなら怯えているのかと思うかもしれない。

しかし塩田君は目測で約180cm程度の身長を持つ健全で硬派で冗談の通じにくそうな男子高校生である。


――この人、笑ってやがる。


ああ、塩田君も笑えるんだなーとか思って気が遠くなった。

しかも隣に佇んでいた奈津さんまで、和んだ笑みを浮かべてほわわんとしていた。

まるでじゃれあう子犬でも見ているかのように穏やかな様子だったが……

目の前で繰り広げられているのは、兄に弄られ続ける先輩の姿であるはずだ。

ここに来る前にあんなに心配していたのはどこに行ったんだろうか。

どうやら私と同じ感覚の人は居ないらしい。

しかしこれではあまりにも真崎先輩が不憫すぎる気がしたので、奈津さんにそっと耳打ちしてみる。


「これって止めたほうがいいのかな」


「……大丈夫。これくらいはいつものことだから……真崎さんも、楽しそうだし」


楽しいんだろうか。

本当にマゾか。

ってか、いつもなのか。

私には、ジン先輩が一方的に弄って遊んでいるようにしか見えない。
 
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