ちくわ部
 
「俺でもいーよ? 一応副部長だしね。奈津に渡してくれれば俺経由できっちーなり顧問なりに渡すしそれでもいーし?」


そう言いながら、私、奈津さん、ジン先輩、と指さしていき、最後に職員室のある実習棟のほうを指さす。

……うん、ダメだ。


「いや、それはさすがにまどろっこしすぎる気が……」


信用しないわけではないが、そうあちこちと人の手を渡るものではないだろう。

ジン先輩はきょとんとしながら、私の煮え切らない返事を聞いていた。

そしてそれに対する言葉は、またも話題の転換。

 
「ていうかねぎ子……入るの?」


「そのつもりですけど……ダメ、ですか?」


ものすごく不思議そうというか、思いっきり素っぽい返しをされると逆に怖い。

しかし先輩はすぐににいっと口角を上げて笑うと、腿に腕をついて少し身を乗り出すようにしながら指を組んだ。


「ほほー。いやいや、ちくわ部はねぎ子を歓迎するよー。主に俺が。面白いし」


だからその評はなんなんだ。


「面白い面白いって……菊池先輩にも言われましたけど、私のどこがそんなに面白いんですか?」


そう尋ねると、ジン先輩は先ほどの姿勢から跳ね返るように上体を起こすとげらげら笑い出した。

黙っていた真崎先輩がここぞとばかりに脇腹へと攻撃を繰り出そうとしたが、綺麗に決まる直前に感づかれ、防がれたうえにカウンターを食らっていた。

もう相手にすること自体やめとけばいいのに。触らぬ神になんとやらじゃないんだろうか。
 
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