ちくわ部
 
妙な表現となるが、これが『ジン先輩』……か。

何かとてつもないことを考えているのか、なにも考えていないのか、全て見抜いているのか、それとも適当なのか――わからない。

それなのに、恐怖感はない。

憎めなさととっつきやすさ、底知れないオーラが不思議なバランスで調和した人。


「ねぎ子って人見知りとかしなさそう。俺としてはお仲間の匂いを感じるんだよねー」

 
お仲間、か。

私がどうだかはよく分からないが、確かにジン先輩は最初から随分慣れ慣れしいというか、フレンドリーな人だった。

会話は成立しにくい場合があるものの、ある意味『話しかけやすい人』ではあると思う。

私だって、先輩後輩の関係に縛られることなく楽しめるのはいいことだと思うが、この人はともかく菊池先輩や真崎先輩はそれでいいんだろうか。

いくら中身のない部活だとはいえ、ある程度の上下関係は必要なのかもしれないし。


「いや、でも……すいません。私、生意気でしたか」


思わず、謝ってしまった。

ついさっきジン先輩に『そういう所がいい』と言われた矢先のことだったから、ジン先輩は気を悪くしたかもしれない。

それでも私の根っこの部分がそれを否定したのだ。

――やりすぎだ、と。


……しかしそれは杞憂で済んだようだった。


「いや、気にしないで! 俺も麻衣ちゃんみたいな子は歓迎だから」


真崎先輩も、人当たりのいい笑みを浮かべて私の事を歓迎してくれた。
 
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