ちくわ部
 
怒った様子はないし、さっきのジン先輩とのやりとりからして、繕うのが得意な人でもなさそうだ。

受け入れてもらえたと、素直に応じていいだろう。


「入部するってんなら、本格的にこれからもよろしくね。嫌なことがあれば我慢しないでぶつけてくれて全然構わないからさ、気楽にやろう?」


先輩同時でぎゃんぎゃん喚いていたときとはまるで違う、穏やかな声。

こちらが本来の真崎先輩なのだろうか。

その言葉に溶かされるように、燻りだしていた後悔や自己嫌悪はなりを潜めた。


しかしジン先輩はおどけるように肩を竦める。


「まるは女子大歓迎だもんねー。無条件で」


「お前なっ……!」


「ありがとうございます。……ところで、あのー、言いにくいんですけど『麻衣ちゃん』って呼び方むず痒いんでやめてもらえはしませんか」


気楽にと言われてついでにひとつ。

だってあんまり下の名前で呼ばれ慣れてないんだもん……

ジン先輩は私の発言にくすくすと笑っていた。

先輩達の言う気楽にとか楽しくって、これでいいんだろうか。


「おし、その調子だねぎ子ー。んで、しーのんはどうするのかな。まだ決めなくてもいいけどー」


私はもう大丈夫とみなしたのか、唐突に矛先が変わる。

突然話を振られた塩田くんは、あ、とだけ言って固まってしまった。

今日一日で、彼は何回固まるつもりなんだろう。疲れないのかな。
 
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