ちくわ部
全員が塩田君に注目した状態で、しばしの沈黙。……どうしよう、空気が重い。塩田君がんばれ。
舞台の主役が彼に切り替わった今、にっちもさっちもいかなくなってしまった。
さて、いつまでこうしているんだろうか。
なんとなく気まずい、なぜ気まずいのかもよくわからない、そんな如何ともしがたい空気が漂う。
具体的な時間はさっぱりわからないが、引き結ばれた唇はやがて緩み――言葉を発した。
「そうですね……じゃあ、俺も」
そうしてしばしの硬直から立ち直った彼が発したのは、予想外にも加入の意思を告げるもの。
その発言をきっかけに、先輩のターゲットが私から塩田君へと完全に切り変わったのが確定する。
ジン先輩は腰を浮かし、テーブルに手をついて身を乗り出した。
同性だから遠慮がないのだろうか。
ずずいっ、とオノマトペが見えてしまいそうな勢いで詰め寄られて、元から固まっていた塩田君がさらに固まってしまっている。
「正気? ねえしーのん正気? まじで?」
真顔で迫るジン先輩。
塩田君が僅かに背中を逸らし、逃げの姿勢を見せる。
ええと、だの、あの、だの、ただひたすらに言葉を濁していた。
真意の汲みづらいその発言にどう返せばいいか言い淀む気持ちも分かる。
「それだとまるで塩田君に入って欲しくないように聞こえますけど……」
矛先がこちらに向くこともないだろうと思い、そっと助け舟を出してみた。
すると先輩はちらと私を見て、しかしすぐに塩田君に向き直る。