ちくわ部
「いやー、俺は心配してるだけだよー」
両手で塩田君の肩をがっちりと掴むと、彼だけに向かって話しかけるように小声で呟いた。
「まるに襲われるよ……あっちの意味で」
「俺がそっちかよ! だからホモじゃねーよ!」
真崎先輩が、ジン先輩の脇から、低身長なりに頑張って後頭部をどつく。
体格差のためにすんなりとはいかなかったが、伸ばした腕の先、握りしめた拳はごつんと音を立ててジン先輩の頭部にぶちあたったのだ。
さすがにジン先輩も死角からの奇襲には対応できなかったようで、思いっきり殴られる形となってしまう。
そしてその勢いで、塩田君に頭突き。……ああ塩田君、かわいそうに……事故だけど。
「痛っ……」
素で漏れたであろう声、もとい痛覚に対する素直かつ直感的な感想。
ちなみにこちらはジン先輩である。
塩田君はというとただ額を押さえて俯いていた。
事故のその直後、ジン先輩は塩田君の肩にかけていた手を離すと――
「……あー、痛い痛い……」
どこか恨めしげな呟きとともに、体をひねって向きを変えつつその長い腕をひらりと――隣の真崎先輩に伸ばす。
一瞬何が起きたのか理解できなかったが、ほどなくして真崎先輩の口から漏れた呻き声とジン先輩の腕の回り方で理解した。
元気にヘッドロックをかましていたのだ。
真崎先輩は助けを求める声もまともに出せないようで、潰れたカエルのような呻きだけを漏らしつつただひたすらにじたばたともがいている。
あれ、これ結構やばいんじゃない?