ちくわ部
さて。真崎先輩はまだ生きているのだろうかとそっちを見たら。
「はー。痛かったー」
どうやらジン先輩の圧勝だったらしい。
ソファの背もたれに上半身を任せきり頭を押さえているジン先輩の足元に、真崎先輩がうつ伏せになって伸びていた。
あれ、おかしいなあ二人とも座ってたと思うんですけど。
いつのまに転げ落ちたんだ。
音がしたら分かったはずなのに……
「先輩……ちょっとやりすぎじゃないですか?」
なんとなく私が手を出すのも憚られたので声をかけるだけに留めてみる。
ジン先輩は首を捻りながら、床に転がったまま微動だにしない真崎先輩をちらりと見た。
「うーん、確かにちょっとやりすぎたかも? まるー、ごめんねー?」
まったくもって謝意が感じられない。
それからその満面の笑みはなんなんだ。
真崎先輩のあたりからほんのりと『てめえ……いつかぶっころす……』とか呟いているのが聞こえたが、聞かなかった事にしよう。
「返事がないー、ただの屍のようだー」
ジン先輩はすっと両手を合わせて目を閉じると、南無ー、と呟いた。
勝手に殺したらそれはそれで怒られるんじゃないか。
「……一応、息はあるみたいですけどね。それより先輩も前後から頭やられて、大丈夫でしたか?」
一応負傷している(と思う)一人として、事務的に心配の言葉をかけてみる。
見ての通りこれだけぴんぴんしているのだから大丈夫じゃないわけがないと思うが、一応、念のため。