ちくわ部
 
「うん? あー、結構痛かったけど、今はもう大丈夫だよー。どうもどうも」


前後から頭をやられてちょっとは普通の人になったりしないかなーとか思ったけれど、変化はないようだった。

にっこり笑ってお礼を言われてしまった。

細かいことは気にしないのか、もしくは単純にずぶといのかもしれない。いや、両方か。


「にしても、いつもこんな感じなんですか?」


「なにが?」


尋ねると、きょとんとした顔で聞き返された。

今までの流れと文脈から多少察して欲しかったが、本気で分かっていないらしい。


「この部活……というか、ジン先輩と真崎先輩が、です」


正直これは後日菊池先輩に聞いたほうが良かったかもしれない、信憑性の点で。

ジン先輩は腕を組んでちょっとだけ考えた後に答えた。


「あー……いつもってほどでもないけど。それなりに、かな。一応自己弁護させてもらうとねぇ、俺から手を挙げることはあんまりないよー?」


返り討ちにはしますけどー、と肩を竦める。

先に手を挙げるのは真崎先輩でも、口で先制をとっているのはジン先輩のほうな気がする。煽っているというかなんというか……

それでいざ真崎先輩が手を出したらここぞとばかりに叩きのめすのか。ちょっとタチが悪い。


どうやらこの一連の流れはある程度パターン化されているらしい。

そして口論程度まではそれこそ日常茶飯事なのだろう。

奈津さんが止めなかったのも、きりがないからだと思えば頷けるからだ。

 
< 50 / 73 >

この作品をシェア

pagetop