ちくわ部
 
「どうして返り討ちにされるって分かってて手を出すんでしょう……やっぱりマゾなんですか」


「そうだって言ってるじゃんかー」


こんなことを言われても、伸びている真崎先輩に動きはない。

動けないのか動かないのかどっちなのかだなんて、私には知る術もないが。

とりあえず手を合わせて冥福を祈っておく。

勝手に殺した気になるつもりはない、ただ敗者への憐憫というか、そんなものだ。

私関係ないけどね。

全くないけどね。


そのときジン先輩が何か切り変えるようにぽんと自らの太ももを叩く。

主に真崎先輩と私に向けられていた視線を塩田君に移した。


さて、奈津さんと塩田君は何をしていたのかというと。

この二人はこの二人で、もう頭突きに関する話題からは逸れて別の話題で雑談に興じていたようだ。

この二人だけではもしかしたら会話にならないのでは、などと少しだけ思ったが、大人しい人同士でそれなりにソリが合ったのだろう。

こちらの色々とどこから突っ込めばいいか分からないやりとりに関わるくらいならそのほうがよっぽどましだ。

私こそどうして先輩達に関わってしまったのか……


「ごめんねー。デコ大丈夫だった?」


奈津さんと話していたところにいきなりジン先輩に口を挟まれる形となったが、それに対する不満は見せていない。というかなさそうだった。

先輩ももうちょっと空気読めばいいと思う。


「あ、はい。大丈夫です……俺こそ、すいません」


逆に謝罪の言葉とともに塩田君は軽く頭を下げた。

彼はただの被害者だというのに……律儀なものだ。
 
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