ちくわ部
「んーん。しーのんは何も悪くないんだから、謝らないで。ところでー、みんな時間大丈夫?」
そう言われて、私たち三人も時計を見た。
ジン先輩が指をさした先、壁に掛けられた時計が示した時間は――菊池先輩が帰ってからもう一時間近く経っている。
もうそんなに経っていたのか。
人が多くて賑やかなせいか、時間の経過が随分と早い。
私を含めて、三人ともここに顔を出している時点でそれなりに暇な日ということになるはずではあるけれど。
「そろそろ帰り時かなー? と思ってさぁ」
「俺はスルーかよっ!」
いつのまにか真崎先輩が生き返っていた。
キレのある突っ込みとは対照的に緩慢な動作でのそのそと起き上がりながらソファに座りなおし、ふんぞりかえる。
不満げな顔と相まってどこぞの傲慢な王様のような振る舞いであったが、中性的な顔立ちと小柄な体躯が威厳を削ぎ落していた。
元から残念オーラを醸しに醸している人なだけあって、怒っていてもあんまり怖くない。
こう言っちゃ失礼だと思うから当然口には出さないでおいた。
「おはようございます。大丈夫ですか?」
「なんかさー、微妙に聞いてたけどさー、麻衣ちゃんも結構酷いよね!」
「うっし。まるも起きたんなら引きずり出して鍵閉めて帰ろっかー」
軽快なテンポでスルーされる。
もう帰るムードだし、少しばかり悪いなぁと思いつつ真崎先輩の追及からは逃げさせてもらおう。