ちくわ部
 

真崎先輩は、襟首を掴んでこようとしたジン先輩の手を乱暴に振り払うと、自分で歩くっつーの! とかなんとか言いながら立ち上がり、ちゃきちゃきと鞄を肩にかけた。

行動の機敏さにおいてはジン先輩より真崎先輩のほうが一歩上か、小柄なだけに。

そして、各々が帰り支度を済ませ(ジン先輩は若干つまらなさそうに)、廊下へと出る。そんなに引きずりたかったんだろうか。


出席簿を片手に持ったジン先輩が慣れた手つきで鍵を閉め、そこで解散、となるわけなのだが。


「んじゃ俺これ出してくるんでー。じゃあねー」


職員室に寄るのは、出席簿を提出しに行くジン先輩だけ。

つまり、あとの四人は一緒、ということになる。

正直言って気まずいメンバーが残ってしまったような……なんだかんだでジン先輩は場をまとめる(半ば無理やりだが)力があると思う。


私がそんなことをなんとなく考えているうちに、もうジン先輩の姿は見えなくなっていた。


ここで立ち尽くしていてもしょうがないし、奈津さんに目配せして歩き出す。

誰かが動けばみなそれに倣うもので、男子二名も一緒になって付いてきた。……あ、そういえば。


「そうだ、先輩。相当やられてたみたいですけど、大丈夫でしたか?」


とりあえず事務的に。

だってほらさっきは動かなかったし言いようがなかったっていうか。


「麻衣ちゃん……! やっぱり心配してくれてたんだね! きっとジンの奴がいたから……」


いつのまにか都合よく解釈されて感動されてしまった。

どんだけ優しさに飢えてるんだこの人は。

嬉しそう、とも幸せそう、とも違う、とにかく喜色満面になっていた。
 
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