ちくわ部
よほどおめでたい頭をしているのか、それとも単純なのか、思考回路が幸せなのか。
それはともかく、やはりさほど親しくない年上の男性からちゃん付けはむず痒い。
真崎先輩の場合ほとんどそうは見えないのがまだ救いだが、やはり引っかかる。
「いや、だからその呼び方やめ……やっぱもういいです……」
そういえば既に一度言っていたんだった。
……なんかもう、いいや。
そのうち慣れるだろう。
「そんな嫌なの? いっそ俺もジンみたいにねぎ子とか呼んだ方がいいの?」
「……それはそれで、もっと嫌です」
しかし真崎先輩はきょとんとした顔で。
異性にほいほい下の名前で呼ばれる事に抵抗があるだけなのだが、そんなにおかしなことだろうか……いやそんなことはないと思う。
下の名前で呼ばせたがるジン先輩みたいなケースのほうが稀なはずだ。
いきなりあだ名を付けて回るなんてどう考えてもおかしいし。
少なくとも私の知る日本では、まず下の名前で呼び捨てしましょうねだなんて常識はなかったはずだ。
まあいい、この話はおそらく続けるだけ無駄だ。
「ところで、いつもああやってジン先輩に一方的にやられてるんですか?」
「うーん……まぁ、そうなるかなぁ。あいつ背高いしなぁ……なんだかんだで軽くいなされるし……」
負けてるのは背だけじゃないような気がする。
そのまま先輩は腕を組んでうんうんと唸り出すと、自分の敗因を自己分析し始めてしまったようだ。