ちくわ部
そこに、今まで黙っていた奈津さんが少し焦ったように声を出した。
「あ、あのっ……」
彼女が後ろの真崎先輩に向き直り、立ち止まってしまったので、私たち3人の足も自然と止まる。
「真崎さん、ごめんなさい……いつも、お兄ちゃんが」
おそらく会話に割り込むタイミングをずっと伺っていたのだろう。
申し訳なさそうに、ぺこぺこと頭を下げた。
ジン先輩ってば……こんなに良い妹さんを持っていながらどうして本人はあんなんなっちゃったんだろうか。
まさか破天荒な先輩の尻ぬぐいは全部彼女がやっていたとでもいうのか。
だとしたら涙の出る話だ。
そこは心を鬼にして、ジン先輩はほっといておくべきだ。
フォローされずに糾弾でもされていけば改心するだろう。
……しかしなんとなくジン先輩だったらのらりくらりとかわして最終的に自分の希望する形に収めてしまいそうな気もする。
「え、いやいや……だから奈津ちゃんが謝る所じゃないってば!」
申し訳ないオーラを全身から放つ奈津さんに、謝られた真崎先輩のほうが慌てだしてしまっていた。
それもそうだ、彼女は何も悪くないのだから。
おずおずと顔を上げた奈津さんに対して、真崎先輩は続ける。
「それに俺達だって本気でいがみ合ってるわけじゃないよ? ジンのことは一応友達だと思ってるし、あいつが本当はいい奴だってことは俺だってよく知ってるつもりだから、さ」
やけに曖昧な言葉が目立つところに自信のなさが伺えるものの、どうやらジン先輩と真崎先輩の友情は妙なバランスで均衡を保っているらしい。