ちくわ部
「小柄といえば……奈津さんは小柄なのにジン先輩は背が高いよね」
私がふと思った事を口にしただけなのだが、なぜだか奈津さんではなく真崎先輩が過敏に反応した。
「それだっ」
何かを閃いたようにがばりと顔を上げたものの、そのまままた力なく俯いてしまう。
どれだけ身長のこと意識してるんだこの人は。
確かに男子高校生にしてかなり小さいし、それなりに長身な塩田君が近くにいるとその小ささがより際立つけれど。
「でもジンにどうやって背伸ばしたのーとか聞いたらそれこそバカにされる……!」
それは閃く前に気付くべきだと思う。
だいたい、真崎先輩の目的は身長を伸ばすことなのかジン先輩に馬鹿にされないことなのかどっちなんだ。
両方だというなら、それは贅沢というものではなかろうか。
少なくとも、ジン先輩が真崎先輩をからかうのは身長だけの問題じゃないしジン先輩自身の性格に因るところも大きいのだから。
「高二じゃもう伸びないような……」
「うわあああ! 言わないで! お願いだからそれは言わないで! きっと俺には遅れてきた成長期が……!」
おそらく悪気はなかったのであろう塩田君の発言は、大いに真崎先輩を傷つけた。
……男子の成長期っていつぐらいだろう? せいぜい中学生とかそのあたりだと思うんだけど……
身長はそんなに大事なものなのかなーと思ったが、コンプレックスとして悩んでいる以上うかつなことは言えない。
私たちがフォローするより前に、低身長の辛さを淡々と語りだしてしまった。