ちくわ部
真崎先輩がぼそりと呟いて咎めるが、ジン先輩に堪えた様子はない。
「まるにバレたって平気じゃん? きっちーにもバレてそうだなー。でも何も言ってこないし、いっか」
「呆れてるだけじゃねーの……?」
そんなこんなで帰り道の間、ずっと先輩ふたりはエレベーターを使う極意のようなものを話していた。
素直に階段を使えばそれが一番なんだろうが……確かにあの長い階段はだるい。
下りならまだしも、登りはかなりきついものがあった。
教職員用とはいえ、あると知ればエレベーターを使いたくなる気持ちも充分にわかる。
わかったからといってそれに賛同できるかというとまた別の話だが。
「夏場は暑いから嫌だしー、冬場は寒くて体動かしたくないから面倒だしー」
「先輩、運動好きそうだなって勝手に思ってましたけど……そうでもないんですね」
背が高いし、バスケでもやってたのかと思っていた。
しかしどうもジン先輩の性格は、いわゆるスポーツマンとはかけ離れているように思える。
要領が良くて、良くも悪くも狡猾というか。
ジン先輩は私のほうを向くと、不思議そうな顔をした。
「スポーツは好きだよ。ルールがあって勝ち負けがあるのは楽しい。でもあの階段は別っしょー?」
「ああ……それもそうですね」
「てか運動好きでも……あんなただの階段に意味を見いだせるのは根っからのスポ魂だけだと思うよー」
「あはは……ですよねぇ」
思わず、笑みが浮かんだ。何を聞いてるんだ私は。