ちくわ部
「まるが痴漢しないように見張っててねー。ばいばーい」
「しねーよ!」
笑顔の真崎先輩の背後からすかさずジン先輩が口を挟む。
乗り込むそのときまで、先輩たちは先輩たちらしかった。
仲が良いんだか悪いんだか……
ほどなくして私たちの乗りこんだ電車のドアは閉まり、そしてゆっくりと走りはじめる。
電車内に空席はまばら。私はドアの傍のバーを掴んだ。
塩田君は私と同じように反対側のバーを掴み、真崎先輩はドアに背中を預けていた。
「いやーしかし……ジンの奴今日はちょっとマジだったなぁ」
首元に手をやりながら呟く真崎先輩。
「思いっきり絞められてましたもんね」
私がそう言うと、見てたなら助けて欲しかったよ……と若干恨めしげな目線を向けられた。
真崎先輩を見捨てたといえば確かに見捨てたのだが、私だって矛先を向けられるのは嫌だ。
罪悪感が全くないわけではないが、慣れていそうな真崎先輩に任せた方が賢明だと判断したんだ。うん。正当化。
真崎先輩はぐりぐりと首を回しながら、私のほうは見ずにまるで独り言のように続ける。
「まぁ……あいつもテンション上がってたのかもしれないなー。麻衣ちゃんのこと気に入ったみたいだし」
「え」
確かに最初に会った日には、面白いとか。今日は、お仲間の匂いがどうとか。言われたけど……言われたけど。
私を、気に入った?
「なーんか、嫌そうだねぇ?」
顔に出ていたらしい。首を傾げたままの真崎先輩が私に目線を向け、楽しそうに言った。