ちくわ部
嫌……なんだろうか。それも何かが違う気がする。
不快かといえば、おそらくそうではない。
「嫌っていうか……複雑ですね」
もしくは、怖い。
何を考えているのか、わかるようで分からないから。
「へーえ。あいつ、気に入った奴には結構絡んでくるから、苦手なら俺が助けるよー」
ジン先輩も、根元は優しい人だと思った。
真崎先輩をからかうのだって親愛の情が伺えたし、悪意を持って人と接するタイプではなさそう。
ただ人を弄るのが好きすぎるのと、その匙加減が多すぎるというだけで……それが問題なのだけども。
「いえ、大丈夫です。それより」
そんなことより、今はこっちのほうが深刻だと、私は思うのだ。
ひっそりと小声で先輩に告げる。
「塩田君が馴染めるようにしたほうがいいと思いますけど」
現に今も、確かに混ざりにくい内容ではあったが私たちの会話に全く混ざれずにいる。
それに私がこうして話題を振った事によって、また固まってしまっているし。
私と真崎先輩、二人ぶんの視線を受けた塩田君は全身を強張らせる。
いや、そんな固まらなくても。
暫くそのままだったのだが、いい加減視線と無言に耐えかねたのか、塩田君が口を開いた。
「どう混ざればいいのか……」
「思った事言えばいいだけだよ」
彼は今まで、どういう人付き合いをしてきたんだろうか。
……なんだか、塩田君との付き合いはこれで終わりそうな気すらしてきてしまった。
例えるなら……また明日、と言ってももう明日も明後日もその次も会う事がないような。そんな気持ち。