ちくわ部
もし本当にそうなるなら、それはとても残念なことじゃないか。
ただちょっと部活をやりたくない人が集まっただけのかりそめの部活もどきで出会った――それだけの話ではあるけれど。
広がりそうもない狭い輪で出会えた偶然を蔑ろにはしたくなかった。
「べつに……どうしても喋れってわけじゃない、けど」
「……ごめん」
「ううん……なんか、私こそ、ごめん」
そのまま、沈黙。
がたごとと電車が走る音だけが、やけに耳に響く。
ああ、どうしよう。私が空気重くしちゃった……
そもそも塩田君は男の子なんだし、私の基準を当てはめてはいけなかったのかもしれない。
男子ってうるさいのはとことんうるさいけど、寡黙な人は本当に話さない。
塩田君にそれを強要したつもりはないとはいえ、そう受け取られてもおかしくはないだけのことを言ってしまった。
「まぁ……その、なんだ」
そこに口を開いたのは、真崎先輩。
少しだけ迷ったような声で、それでも私の耳にはっきりと届いて響くような、しっかりとしたものだった。
「せっかくこうして会えたのにこれで終わりってのも寂しいし、もし入部しなかったとしても、顔出したいなーと思ったときだけでいいから出してよ。塩田も、麻衣ちゃんも、さ」
「はい」
私と塩田君の声が重なる。
思わず彼のほうを見た。
向こうもこっちを見ようとしていたようで目が合ってしまい、思わず慌てて逸らす。