ちくわ部
 
「わかりました。ところで、菊池先輩……何かあったんですか?」


「んー? どして?」


……はぐらかされた。

先輩の様子が変わったのは、私が入部届を『ジン先輩以外に』出そうとしてからだ。

違和感の正体なんて、分かってるに決まってるのに。


「『暫く来ない』、って言ったじゃないですか」


私は理由を求めた。

何があったのか、知りたい。

ジン先輩が分かりきっていることをわざわざぼかしたのは触れられたくないからだということくらい私にも汲み取れる。

それならそうと、触らないでくれとはっきり言って欲しい。

煮え切らない態度なんてジン先輩らしくもない。

菊池先輩も、ジン先輩も何か隠すならもっとうまくやって欲しい。

こんなの、追及してくれと言っているのと同じだ。


「あぁ……アレだよ。きっちーがそもそもこの部活なんかに入ってる理由、かな。それにちょっと色々と」


私の語気から察したのか、ジン先輩は少しだけ理由を明かしてくれた。

彼にしては珍しく、弱々しく、自信がなさそうで曖昧な物言いだ。

……やはり、あまり触れてはいけない部分なのかもしれない。


そして菊池先輩も、いつも帰るのが早いらしいから何かあるだろうとは思っていたが――その理由こそが、かなりデリケートなものだということか。

全貌は分からずとも、漠然とならば……見えてきた気がする。
 
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