ちくわ部
 
「……すいません。あんまり聞いちゃいけないことでしたか」


そう言いながら軽く頭を下げると、先輩は慈しむような声でこう返す。


「気になるだろうしね。俺こそ変な言い方して逆に心配させてごめんね」


……昨日真崎先輩をあれだけ弄り倒していた人と同じとは思えない。

申し訳なさそうに、もしくは困ったように笑うジン先輩は、また少しだけ飄々とした空気を取り戻すと肩を竦めた。


「……下手に誤魔化すと余計突っ込まれそうで、俺どこまで話していいのかわかんないけど。ねぎ子なら、いいかな……」


「ねぎ子ってありえんわああぁぁーっ!」


突如発せられた大声とドアを勢いよく開け放つ音に、思わず振り返る。

力一杯ドアを押しのけ部室の入り口付近に立っていたのは、鬼のような形相でジン先輩を睨みつける少女だった。

少し外側に跳ねたショートヘアーで、前髪はヘアピンで留めている。

リボンタイの色は……緑。私と同じ、一年生。


「お前ね……もう少し声量ってもんを考えて叫んだらどうなの? ってか叫ばないのー」


呆れたような声で先輩が咎めると、少女は鼻を鳴らして腕を組む。

少しきつい目元をさらにきつくさせて、ジン先輩をぎろりと目線で突き刺した。


「だ、だってありえない……ねぎ子って! 酷いよ……女の子に対してそのあだ名はもはやイジメ!」


確かに酷いと思う。よくぞ言ってくれた。
 
< 73 / 73 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

Shoegazer,Skygazer

総文字数/23,999

青春・友情43ページ

表紙を見る
Nightmare

総文字数/25,282

ファンタジー60ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop