Nightmare
あたしは、『貘』になった。

それらしい力の使い方とかコントロールとか、まだまだ全然ダメだけど。


「……ねぇ、それでさ。いい加減にしてほしいんだけど?」


「そりゃこっちのセリフだし……」


で、現在その相方……というかこうなった元凶というか、とにかくそんな感じの相手と喧嘩中。

悪い人じゃないんだけどね。

ただ、意地悪ではあると思う。


「俺が何したっていうのさ? それでふてくされる理由とか、俺にあたってくる理由がまーったく分からないね」


「デリカシーのない……『見た』でしょ?」


「『見えた』か『見えてない』で言えば『見えた』けど。まるで俺が故意に覗いたかのような表現はやめてほしいな」


そう言ってはあっとため息をついてみせる。

体育座りの姿勢で背を向けるあたしに、相手の顔は見えない。

だけどきっと、いつもの呆れきった顔をしてるんだろう。


「そもそも……吹っ飛ばされたところを助けたんだから、感謝されこそすれ怒られる意味がわからないね。スカートを穿いてたのは君の自由だけど、中が見えたのは俺の自由じゃない」


「うっ……」
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