Nightmare
バクはちょっとだけ言葉を濁しながら、答える。


「……そうだね。それじゃそのうち……気が向いたら、俺が『生きてた頃』の話をしてもいいよ」


「ほんと!?」


「気が向いたらね。絶対とは言ってないよ?」


バクはくつくつと笑いながらいつもの調子を取り戻して――


その時、あたしは目を疑った。

バクのすぐ後ろの扉が、ひとりでに開いたから。


「バクっ!」


あたしは反射的にバクを引っ張って引きよせた。

自分よりずっと体格のいい彼をどこまでやれるかなんて考えていなかったけれど、あたしの行動が予想外だったらしく、バクは案外あっさりと、あたしを押し倒すようにして倒れる。


「った……ちょ、いきなり何っ……」


わけがわからないといったような声を漏らすが、あたしにとってはそれどころじゃない。

予想以上に勢いよくバクと一緒に倒れてしまったため、完全に扉が見えなくなってしまったのだ。



「重っ! とりあえずのいて! ドアが勝手に開いたんだよ!」


背中をばしばしやると、バクは身を起してあたしの上からどいた。

そしてあたしの言葉を確かめるように扉を見て、そしてあたしも、バクが上からどいたことでその扉が見えるようになる。




そこには、扉から半分身を出すようにして、人がいた。
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