今なら素直に好きと言える
出逢い
その人と出逢ったのは、まだ亜結が14歳…―中学2年生のときだった。
小学校の低学年から通っていた体操クラブの夏合宿の帰り、電車に乗っていた亜結は楽しかった合宿が終わることを寂しく思い、電車から流れていく風景をただ見つめていた。
周りは小学校の低学年の子どもたちがたくさんいて、わちゃわちゃと騒ぐ中、亜結は一人ぽつんと立っていた。
それが気分が悪いと判断されたのか、近くにいた先生が大丈夫かと体調を気遣って声をかけてくれたのだ。
ただぼーっとしていただけなので、特に体がだるいとかそういうことはないため先生には大丈夫だと言ってまた外の緑があふれる風景に目を移した。
すると突然、視界から緑が消えたかと思うと先ほどとは違う先生が亜結の顔を覗きこんで来た。
「しんどい?」
そう、言われた。
だがその言葉に応えようとも、先生と亜結の顔の距離は約5センチ。
中学2年生なのに男の人にそんなに顔を近づけられては、先生であっても嫌なもの。
亜結はその先生から顔を遠ざけるが、先生はニコニコしながら一定の距離を保って来る。