孤独な花と孤高の王子
「真琴さん、…そんな顔をしたまま病室に戻ったら笹倉さんが気づいてしまいますよ」
院長先生が苦しそうな声でそう言う。
…でも、だからってどんな顔をすればいいの?
「せ、先生?…そのこと、おとうさんには」
「告知はしません。そういう約束ですから」
………なんでも、院長先生は義父から最初の手術の際に余命宣告をしないよう頼まれたらしい。
「笹倉さんは………命が尽きるその日まで、あなたと二人で普通の生活をしたいと言っていましたよ。だから、親孝行だと思って普通にしていてあげてくださいね」