孤独な花と孤高の王子
艶やかな黒髪に整った顔立ち。
…うちの会社にこんな男の人いたっけ?
その人は表情を変えることなくそう言うと、空いている自分の隣の席を指さす。
初めて見たその人がさっきの気疲れの原因なのかもしれない、と思いながらも私は招かれるままに着席した。
「名前は?」
「…笹倉です」
素っ気なくそう答えると、その人は満足げに頷く。
私はその人にさして興味もなかったので、そのあとの契約書を書わす場面をただぼんやりと眺めるだけだった。