心の中にはいつもキミがいた



来てくれるはず・・・・・・




寝たフリを続けた。




やばいよ、この緊張感。





俺は、ぼさぼさの髪を直そうと体を起こす。




「入るよ」




キミの声がした。




俺はタオルを頭の上に乗せたまま、ポカーンとしてキミを見つめていた。




今日のキミもかわいくて、好きだな。




「どうしたの?」



「いや、何でもない」




来てくれた。


本当に来てくれた。




らっきょうパワー。




「お母さんがおばさんによろしくって言ってた。おばさんのらっきょう漬けは、すごくおいしいんだもん」



早速らっきょうの話題。


キミは相当らっきょうが好きなんだな。



俺はまだガキだかららっきょうの魅力がわからない。


でも、今日から食べてみよう。




「練習、大変?」



ボーっとしたままの俺を心配そうに見つめるキミ。



いや、違う。



ただ、嬉しくて・・・・・・


幸せで、何も言葉が出ないんだ。





「これ」



俺はお母さんから預かったらっきょうのビンをキミに手渡した。



「ありがとう」




できれば、まだ渡したくなかった。


渡してしまうと、キミは練習に戻ってしまうんだろ。





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