心の中にはいつもキミがいた
「あ、梅干し。これ」
キミは思い出したかのように梅干しのビンを俺の座っている机に置いた。
「お、サンキュ。おばさんによろしく」
梅干しのビンを持ちあげて、窓から入ってくる光に透かしてみる。
綺麗な赤だった。
「もう、休憩終わっちゃう」
キミは、昨日よりも名残惜しそうにそう言いながら時計を見た。
俺も時計を見て・・・・・・
「じゃあ、一緒に練習戻ろうか」
と机からおりた。
俺の休憩は、まだ10分以上あったが、そんなことはどうでも良かった。
少しでも話がしたかったし、キミを感じていたかった。
俺とキミは、2組の教室を出て、廊下を並んで歩いた。
初めてだった。
中学の廊下を並んで歩くなんて。
俺はゆっくりと歩いた。
「背、伸びたね」
キミもゆっくりと歩きながら、チラっと俺を見た。
「昔はチビだったもんな、俺」
キミと話せなくなった頃から俺は背が伸びた。