心の中にはいつもキミがいた
「浴衣着たかったのにな~」
キミは、起き上がり、カーテンを手でもてあそびながら呟いた。
「浴衣、着れないの?」
「部活終わるの遅いから、このまま行くんだって」
残念そうなキミに、何と声をかけていいのかわからない俺。
「来年は着たいな」
キミは独り言のようにそう言って、カーテンと遊んでいた。
来年キミが浴衣を着て盆踊り大会に出かける時、隣にいるのは誰だろう。
俺であってほしい。
いや、俺じゃなきゃ嫌だ。
「今日、花火最後まで見るのか?」
俺は、教室をうろうろと歩きながらキミに質問した。
うろうろしていないと、ドキドキが凄くて、苦しくなる。
今日のキミは、少しいつもと違って、幻想的だったから。
「うん。最後の花火見てから、帰る」
「そっか」
誘いたいのに、なかなか誘えない。
キミは、ずっとカーテンを揺らしながら、俺の方を見ない。
後ろからキミを抱きしめたいという衝動にかられたが、そんな勇気はない。
それに、今の関係を崩すようなことはしたくない。