心の中にはいつもキミがいた
「金魚、すくえるかな」
キミはカーテンから手を離し、俺の方を見た。
まっすぐな目。
俺は逆光で、キミの顔がはっきりと見えなくて、目を細めた。
「下手だから、無理だよ」
俺がいじわるを言うと、キミはまたカーテンの方を見て、すねたようにカーテンを乱暴に揺らす。
「嘘だよ。ごめん」
焦った俺に、キミは言う。
「金魚、ちょうだいね」
「え?」
「金魚すくい、しないの?」
男ばかりで行くのに、金魚すくいは恥ずかしい。
でも・・・・・・愛しのキミの願いなら。
「いっぱいすくって、いっぱいもらってやるよ」
とかっこつけて言ってみる。
キミは、カーテンをカーディガンのように体に巻きつけて、俺に微笑んだ。
たまらなくかわいいんだけど。
「今日、花火の後・・・・・・一緒に帰らない?暗くて危ないし、家まで送るよ」
キミの笑顔で勇気が出た。
誰にも渡したくない。
俺だけのキミでいて欲しい。
だから、どうしてもこの夏に・・・・・・気持ちを伝えなきゃ。
誰かに取られてからじゃ遅い。
こんなにもキミが好きなのに。
他の誰かになんて・・・・・・触れさせたくないんだ。