ラフ
プロローグ
さわさわと風の吹く音だけが聴こえる。

「お母さん。私、今年で25になったよ。お母さんが私を産んだのと同い年になったよ」

新聞に包んであった花を取り出したとき、一瞬手が止まった。

「結局・・・お父さんが誰なのか、最後まで教えてくれなかったけど、もうそんなことどうでもいいんだ」

枯れているはずの花が、新しい花に取り替えられていた。

「お母さんのこと、お父さんどう思ってるんだろ」

持って来た花も一緒に供え、墓石を磨いて上から水をかける。線香を取り出し、火をつけ、そっと手を合わせる。

バケツと柄杓を持ってその場を離れた。


「またね、お母さん」
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