ラフ
リビングのソファで泉と並んで、コーヒーを飲みながら、ボーっとテレビを見ていた。

「奈緒」

「んー?」

「今日の予定は?」

泉に聞かれて考えてみる。
今日は確か、特に予定はなかったかな?

「予定は特にないかなー」

ずずっとコーヒーをすする。
泉の入れてくれたコーヒーはとてもおいしい。

「俺、今日は夕方に撮影があんねんけど、それ終わったら一緒にご飯食べに行こうや」

「んー・・・・ん?撮影?」

泉の言葉に、はっと昨日の明日香の言葉を思い出す。

「げーのーじんやったんやな、そういえば・・・」

思い出したかのように言うと、泉が笑った。

「そやで、忘れてた?」

聞かれて苦笑いしながら頷く。
自分でもどうかしてると思った。
一生縁のない人種だと思っていたから、余計にだ。
よくよく考えれば、結構大事なとこだったかも知れない。

「これでも一応、売れっ子芸人やで?俺」

けらけらと笑う泉を見ると、本当に普通の人に見えて。
そんな有名人にはとうてい見えなかった。

「でも、私、泉君のこと、知らんかった」

コレは本当。初対面でみても、名前を聞いても、聞いたことがあるかも?って程度だ。
ちろっと泉を見てみる。
泉はにやっと笑ってこっちを見ていた。

「あ、信じてない?そしたらー・・・お、ええ時間やん」

時計をみて、泉が笑いながらチャンネルを変えた。
CMが流れていた。何か見たい番組でもあるのかと見ていると、番組が始まった。

「・・・・・・うっそ」

番組のMCは泉と堺だ。
隣にいる人が、友人の恋人と、TVに映っている。


改めて、恋人が、有名人なのだと、認識させられた。
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