ラフ
「やた。15連勝ー!」

ガッツポーズをとる。
隣で泉はうなだれていた。

「泉君、弱くね?」

にやにやと笑いながら、泉の肩をぽんぽん、と叩く。ピザがくるまでの間、ゲームでもしていようってことになり、おいてあった格闘ゲームで対戦していたのだが、泉もなかなかの腕前ではあったが、それ以上に、私の方が強かったようで、泉は連敗記録を更新していた。

「もう一回!」

その後もむきになった泉の挑戦を受け、何度か対戦してみたが、泉は私に勝てなかった。

「奈緒、何でそんなに強い!」

片言しか喋れない外人のように文句を言ってくる。それがおかしくて笑った。

「ゲーム好きやもん」

いぇぃ、とピースしてみる。
泉の動きが一瞬止まった。
首をかしげると、泉がもう一回!と勝負を挑んできた。

結局、ピザがくるまでの間、一度も泉が勝つことはなかった。



キンコーン


家のチャイムが鳴った。泉はパタパタと玄関に向い、数分後、ピザを持ってリビングに戻ってきた。

ピザを食べながら、他愛もない話をしていた。盛り上がっていたゲームの話、ピザの話。学生時代の思い出話や、明日香のこと。いろんなことを話した。

「ごちそーさまでした!」

パン、と手を合わせてぺこっとお辞儀する。すると、泉が笑いながらこっちを見ていた。

「な、なに?」

何か笑われるようなことをしたのかと、思い返してみる。

と、

「ケチャップ。ついてんで」

口の周りにケチャップがついていたらしい。
泉がそういって、私の口の端を親指できゅっと拭いた。
少し恥ずかしくなって、顔が赤くなっていった気がした。

「おこちゃま」

そういって、指についたケチャップを泉は舐めた。おこちゃまと言われて腹が立ったが、泉のその行動に、妙に色気を感じて、さらに顔が赤くなった。

そんな私に気づいたのか、泉はにやっと笑うと、顔を近づけてきた。
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