ラフ
心臓がドキドキいっている。
やばい、泉に聞こえてるんじゃないか。
そう思うと、余計に心臓が高鳴った。

だめ、止まって。

そう思っても、ドキドキは止まらず、ひどくなる一方だった。

「奈緒」

泉の声が麻薬のように感じた。
ごくん、と喉が鳴る。
緊張で体がうまく動かない。
泉の顔があと少しでぶつかるというところまできていた。

「ち、近い近い」

顔が真っ赤になる。きっと、茹蛸のようになっている。
そう思った。

次の瞬間、泉の顔がふっと近づいた。
ぺろっとケチャップのついていたところを舐められた。

「!!!!!!!!!!」

声が出なかった。顔が熱い。
今まで、男の人と付き合ったことがないわけじゃない。
一応、何人か彼氏もいたし、キスだってしたことくらいある。もちろんその先だって。

でも、なんでか緊張する。ドキドキする。頭の中が、真っ白になる。
そんな感覚だった。

「可愛い」

泉の優しい囁きに、ドキドキが止まらなかった。

泉の顔がまた近づく。今度はそっと、唇に優しく触れてきた。

「ん・・・・っ」

優しくて、やわらかいキス。頭の中が真っ白になった。
今までの誰とのキスよりも、優しくて甘い。
そんな気がした。

「ふっ・・・・ん・・・っ」

このまま続けてたらきっと、溶けてなくなる。
そう思った。
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