ラフ
ぺたん、とその場にへたりこんだ。
唇には、まだ、泉の唇の感触が残っている気がした。

「はああぁぁぁ・・・・」

一生分にも近いほどのため息が出た。
心臓はまだドキドキしている。
びっくりするくらい、大人の男で、艶っぽくて。
そうかと思えば、子供っぽくって、わがまま言ってみたり、でも可愛くって。

ホントに、昨日知り合ったばっかりやのに。
何でこんなに気になるんやろ。
びっくりするくらいドキドキするし。
・・・あかん、はまってきてる。

ぺたぺた、とリビングに戻ると、ソファに座り込んで、ついていたTVをぼーっと眺めた。

どれくらい、ボーっとしていたか分からない。
気づけば外の色が少し、赤くなっていた。
そして、まだパジャマから着替えてないことに気づいた。

「あ・・・そういえば、帰ってないんやった。着替えに・・・」

そう思ってあることに気づく。

・・・私、家から出れん。

ここは自分の家じゃない。泉の家だ。もちろん、鍵なんて持っていない。
自分の家とここは、そんなに離れているわけじゃない。が、人の家を開けっ放しで出かけるなんて、怖くてできない。ましてや、有名人の家だ。一般人の家より何かある可能性は高い。

「・・・はぁ・・・・・」

ため息ばかりが出た。だが仕方がない。
どうしようかと考えていると、携帯が鳴り出した。

「あ」

携帯の画面を見ると、明日香からだった。

「もしもし?」

電話に出ると、明日香の陽気な声が聞こえてきた。

『今大丈夫?』
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