ラフ
***** 泉's View *****

マンションを出て、タクシーを拾った。

「関テレまで」

短く言うと、タクシーは出発した。

昨日の夜からのことを思い出す。
本当は、付き合って欲しいなんて言ってないし、一緒に寝ていいともいっていなかった。本当のことを、もし、奈緒に告げたら。
あいつ、どう思ったかな。
そう思うと、不安でたまらなかった。自分でも、なぜあんなことを言ったのか。正直なところ、よく分からない。ただ、奈緒が欲しかった。そばにいて欲しいと思ったし、他のやつのところにもしも、行ったら。そう思うと嫌で仕方がなかった。
軽蔑されるかも知れないし、嫌われるかも知れない。
それは嫌だ。けど、それ以上に、どうしても、奈緒にいて欲しかった。

酒のせいにされるかも知れない。
そう思ったけど、奈緒は付き合うと言ってくれた。
今は、俺の彼女だ。

そう思うと、自然と顔が緩んだ。

やばいな。顔が勝手ににやける。

十数分たったくらいか、テレビ局の裏口に到着した。

「はい、1680円です」

お金を渡し、領収書をもらって、タクシーを降りた。
裏口から入ろうとしたところ、後ろから声をかけられた。

「あ、あの!泉さん・・・ですよね?」

振り返ると、女の子が3人、立っていた。

「一緒に写真!撮ってもらってもいいですか!?」

ぺこりとお辞儀をする女の子達。
にっこり笑っていいよ、とメガネをとった。

「じゃ、撮るよー!」

携帯で数枚、写メを撮った。

「それじゃ、今から仕事やから」

にっこり笑って手を振った。女の子達は、きゃぁきゃぁと騒いでいた。
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