ラフ
控え室に戻ると、夕方からの生番組の打ち合わせのため、マネージャーが待っていた。

「で、後は・・・」

マネージャーの話を聞きながら、打ち合わせをしていると、堺の携帯が鳴った。どうやらメールのようで、数回コールされた後、ぷちっと途切れた。と、同時に、堺の顔が笑顔になった。すぐに相手が誰か分かった。

「・・・で、話は終わり。時間までゆっくり休んでて」

そういって、部屋を出て行った。
すぐさま堺は携帯を手に取り、カコカコとメールを打っていた。自分も、奈緒にメールを、と思ったが、番号を知らないことに気づく。携帯を持ってうなだれていると、堺が声をかけてきた。

「どした、奈緒ちゃんにメールでも打たんのか?」

悲壮な表情を浮かべる泉を見て、気づいた。

「・・・お前、番号聞くの忘れた?」

堺の笑い声が部屋中に響き渡った。泉はさらに落ち込んだ。


コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。
泉がドアを開けると先輩芸人のピースの2人が立っていた。

「高松さんに高瀬さん!お疲れ様です!」

泉の後ろから、堺もお疲れ様です、と挨拶した。

「どうしたんですか?2人して」

控え室に招き入れると、高松が笑いながら答えた。

「いや、前を通りかかったら、えらい笑い声が聞こえてな。なんや、おもしろそうやったから、ちょっと覗いてみただけや」

泉が堺をキッとにらみつけた。

「なんかおもろいことでもあったんか?」

高瀬に聞かれ、堺が答えた。

「いや、ついこないだのことなんっすけどね」

別のことで、この間、堺が爆笑した、泉の失敗談を話した。


ナイスだ、香月!


暫く、他愛もない世間話をしていた。

「そうやそうや。お前ら今日の夜、暇か?」

高松に聞かれて、2人は顔を見合わせた。

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