ラフ
生番組も無事に終わり、テレビ局を後にした。

「じゃ。俺、いったん帰るわ」

堺にそういうと、走ってタクシーのところまで向かった。

「難波のリムジンバス乗り場までとりあえず」

タクシーを走らせている間、なんて説明すればいいのかと、そればっかり考えていた。

自分から約束したことを、いきなりやぶるとか。最低やないか。どうしよ、嫌われたら。あぁぁぁ、困った。

タクシーの中では、ため息しか出なかった。


「ありがとうございます」

家のそばでタクシーを降りた。急いでマンションに向かった。郵便受けをみることもなく、部屋に急ぐ。鍵を開けて、勢い良くドアを開けた。

「ただいま!」

少し息があがっていた。

「あ、お帰り」

リビングのドアが開いて、出たときと同じ姿の奈緒の姿があった。駆け寄ってぎゅっと抱きしめる。

「ちょ、ちょっと、どしたんさ」

突然の出来事に、奈緒は少し戸惑った。
自分でもどうかしてると思う。それでも、奈緒がそばにいると、信じられないくらい安心する。

「泉君?」

奈緒に名前を呼ばれてはっと我にかえった。

「あー、ごめんごめん。嬉しくって」

少し照れた顔をする奈緒。

あかんって。その顔は。
可愛くて離れたくなくなる。

軽くキスをした。
奈緒は少しボーっとした顔になる。
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