ラフ
始まって30分位たったころだろうか。
最後の1人、高松が、女の子を連れて店に入ってきた。

「遅くなってすまーん!」

全然悪びれた様子もなく、席に着いた。
つれてきたのは20代後半くらいだろうか、少し化粧の濃い、派手な感じの女性だったが、スタイルがよく、綺麗な感じの人だった。

「この子は愛ちゃん。俺は高松でーす♪」

すでにテンションが異様に高い。そのテンションについていくので必死だった。

「アレ?お前その子だったっけ?」

「何が」

高瀬に聞かれて、何のことかと高松がきょとんとした顔で聞き返した。

「いやいや、お前さ、声かけてた子、別の女の子じゃなかったっけ?」

高瀬が愛をまじまじと見ながら高松に聞いた。

「あー。あれね。フラレタの。俺」

えぇ!と全員がびっくりした。高松はかなりの男前で、抱かれたい芸人のTOP3にはいつもランクインしているくらいだ。何より、高松がナンパをして失敗したなんていうのは今まできいたことがなかったからだ。

「うっそー!誰?それ」

「チョーもったいなーい!」

女の子も信じられないといった感じで騒いでいた。

「で、フラレて傷心の俺を、愛ちゃんが慰めてくれてたってわけだー」

けらけらと笑いながら答える高松。


あの高松さんをふるとか。すっげーな。その子。
・・・奈緒は断ってくれたりするかな。もし、高松さんに誘われたら。
1人妄想にふけっていると、いつの間にか、愛が隣に座っていた。

「こんばんわー♪」

猫なで声で話しかけてくる。
営業スマイルでどうも、と返した。
隣に座ってからというもの、あれこれいろんなことを聞いてきた。

< 36 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop