ラフ
「ねぇね、彼女っているんですかぁ?」

いると大声で言ってやりたいが、そんなことが言えるはずもなく。

「いや、いないっすよ」

はは、と乾いた笑いが出た。
興味がない人間を相手に喋ることが、こんなに苦痛だということを初めて知った。
ホステスやホストってすげーんだなー、と感心していると、愛が携帯を取り出した。

「ねね、番号交換しよ?」

上目遣いにお願いしてくる。
奈緒にこんなお願いのされ方したらなんでもききそー。
なんてことを思っていたら、ねぇねぇ!と催促された。
社交辞令ということで、番号を交換した。

「ありがとー♪ねね、泉さんってぇ、この後どーするんですかぁ??」

奈緒の所に行って一緒に寝る、と言いたいところだが、ここもぐっとこらえて答えた。

「いや、この後は先輩達がどうするか次第なんで」

苦笑いで答えた。


気づけば時間は12時前。
終電が終わる時間だ。

「高松さん、高松さん。もう終電なくなりますよ?」

後輩の八十場が高松に言うと、まだまだこれからだー!と、みんなでカラオケに行くことになった。が、高瀬はいつの間にか、きていた女の子の内の1人と一緒にいなくなっていた。
女の子は2人ほど、家が遠いからと、電車で帰っていき、残ったのは4人。
男も気づけば、ちゃっかり堺がいなくなっていて、コージ先輩も明日朝が早いということで帰っていったので、自分を含めて4人になっていた。

「れっつごー♪」

俺も早く帰りたい、と思いながら、近くのカラオケに行った。

大人数でのカラオケなので、あまり歌わなくてすんだのはラッキーだった。
トイレに抜けるフリをしてメールを送った。
時間は夜中。1時をとっくに過ぎていた。もしかしたら返事があるかも、と、淡い期待を抱いていたが、残念ながら、返信はなかった。


もう寝たかな、さすがに。


残念そうにがっくりとうなだれた。

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