ラフ
明日香からのメールは、堺が飲み会で行くことについての愚痴だった。昨日のことだし、いまさらかも…それに、メール送るには朝早いかな?と思いながらも、泉もそうだったし、堺を許してあげてとメールを送った。

泉からのメールは、今すぐにでも会いたい。といった内容のメールだった。強引な先輩のせいで、カラオケに行ってオールになりそうだとも書いてあった。
嫌がる泉の顔が目に浮かぶ。
…少しだけ笑えた。


・・・泉君、お昼から仕事もあるのに、映画とかいうてる場合やないんや・・・


多分、昨日飲み会が入ったせいで、一緒に食事にいけないことに対してのお詫びのつもりなんだろう。なんとなくそんな気がした。
けど、別に一緒に居られれば、それでいい。
どこかにでかけられなくても、まったりしているだけでもいい。


・・・もうさすがに帰ってるやんな?


少し早いが、支度をして、泉の家へ向かった。


向かいながら、まずはメールを打った。今、お家に向かってます、と。
しかし、いっこうに返信がこない。
ちょうど、泉の家と奈緒の家の中間地点くらいにきたが、それでもメールはない。


・・・もしかして、まだ寝てる?今行ったら、起こしてまうかなぁ・・・


少し泉の家に行くのをためらった。
が、メールも送ってしまったし、とりあえずはいったん行ってみようと思ってマンションまで歩いた。

マンションに着いたが、泉の家はオートロック。玄関ホールで立ち往生だ。
一度電話をかけてみた。
何度かコール音はするものの、とられることなく、そのまま留守電になった。
2・3度かけてみたが、結果は同じだった。

・・・確か、部屋番号は701やったよね。

呼び出してみる。が、誰も出ない。どうしたものかと思って悩んでいると、ガチャっという音がした。

「泉君?」

思わず聞いてみたが、何も喋らず、相手は無言だった。


・・・あれ?もしかして、間違えた?


不安に思っていると、インターフォンから聞こえてきたのは意外な声だった。

『あんた誰?』

女の人の声だ。泉の声じゃない。

「あ、すいません。間違ったみたいです。ごめんなさい」

そう告げると、ガチャっという音がして、何も音が聞こえなくなった。
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