ラフ
「・・・ありがとうございます」

癪だが、拾ってくれたのは事実だし、どういう理由であれ、落とした私が悪い。

「いえいえ、どういたしまして」

高松は笑顔のままだ。


・・・顔はいいのに、性格は最悪よね、この人。


ふぅ、と息を吐くと、どうかした?と高松が顔を覗き込んでくる。

「いえ!別に」

バッと顔を話す。
過剰反応かも知れないが、昨日の今日だ。危険人物だと分かっている人間に対して、気持ちを許すなんてことはできない。

「あはは、おもろいなぁ」

誰のせいだ!と喉まででかかったが、ぐっとこらえた。

「で、ほかに何か用でもあるんですか?」

高松がまだ目の前にいるので、さっさとどっかへ行け、という思いを込めて聞いてみた。

「いや?ないけど」

しれっと答えてくる。

「ないなら帰ったらどうです。なんにも頼んでないのにいるのって、お店の人に対して失礼じゃないですか?」

そういうと、それもそうか、といって、コーヒーを買って戻ってきた。

「いや~、コーヒーって目が覚めるな」

コーヒーをすすりながら喋りかけてくる。

「あの」

「何?」

「こんだけ他に席が空いてるのに、なんで私のとこにいるんですか」

イライラする。多分、高松のせいだけじゃない。あのインターフォンに出た女性のこともあって、こんなにイライラしている。

「え?君と居たいから」

は?と、思わず大きな声を出してしまった。

「あはは、声でかいなー。俺が、奈緒ちゃんと一緒にコーヒーが飲みたいから」
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