君と書いて「恋」と読もう。
第1章 過ち

一枚の手紙

「放課後屋上へ 〜恋〜」
と書かれた手紙。
僕は下駄箱から、靴と同時に取り出すと、屋上へと走る。
階段で見かけた先生に「どこに行くんだ」と聞かれ、「忘れ物です」と答えた僕。
この時、行き先を誤魔化さなければ。

* * *

‘ガ…チャ…'
錆びた重たい扉。
ヤケに静かで開いた音の余韻が僕の耳に響く。
周りをキョロキョロと見回してみた。
柵の内側に寄り掛かる女を見つけた。
僕はその女に歩み寄る。
「あ…来たの?あんな手紙ごときで単純ね?虹(こう)。」
女はニヤニヤしながら、僕の名を呼んだ。
「気安く俺の名前呼んでんじゃねぇよ。なぁ?百合?」
僕も彼女の名を呼ぶ。
僕と彼女は世間で言う。
‘体だけの関係'
だから。
きっと今日も呼び出された。
手紙の最後に書かれた「〜恋〜」とは百合のこと。
君には、「恋」と言う意味がある。
「じゃ、いつものお願い。ストレスが溜まっちゃって仕様がないの。」
そう言って百合は、今日もYシャツのボタンを外して行く。
もちろん僕が百合の服を脱がしたことはない。
「夕日が沈みだしたわね?これからが、夜本番よ?」
百合はクスクス笑い、僕の胸に顔を埋めた。
「脱がせて。」
今日の百合は、何処かおかしい。
まず手紙で誘ってきた時点で、おかしいと思った。
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