月と太陽

〇迷い〇

「きりーつ!気を付け!さよ~ならぁ~」
「さよぉ~なら。」
帰りの号令。
あちこちに、響く喋り声。
その中に桜の声もあった。
僕が桜と出会ってから?
桜に気付いてもらえてから?の方があってるかも。
あの日からもう1ヶ月が過ぎていた。
桜も、クラスに馴染み、本当はいい人だから、今や2年5組の人気者になっていた。
桜は、明らかに毎日笑顔だった。
授業にも出るようになり、席は僕の隣に座らせた。
でも、失敗。
隣に桜がいると、こっちが授業に集中できない。
いつも、スキルと睨めっこしている、桜。
眉間にしわを寄せて、数分考えてから、スキルに怒り出す。
僕が「大丈夫?教えようか?」と言うと、決まって「平気よっ!こんなのちょろいわっ!」と言って、もう1度睨めっこ開始。
でも、分かんないと泣きそうな顔するから、男の本能として、いじめたくなっちゃうほど、可愛くて。
凄く愛しかった。
でも、僕がこの‘桜への恋心’に気付いたのは、つい最近のこと。
前までただ、珍しい桜に興味を抱いていただけだった。
でも、いつの間にか、桜の何もかもが愛しくなっていた。
今日は、何して帰ろうか・・・・。
あっ。そうだ。
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