だからキスして。
結局、彼女のオフィスへ行く事にした。

教えられたものの…最近は外出もしなくなっていたし、電車も乗り方が複雑になった気がする。

途中、人に聞いたりして約束の時間をだいぶ過ぎて…ようやく小さなオフィスに辿り着いた。

ドアをノックすると、可愛らしい声で返事をするのと同時に

中から予想以上に若い女性が現れた。

長い黒髪…きちんと今時の化粧をして。

それでいて派手ではない、落ち着いた服装。

「す、すまない遅くなってしまって…古島五郎だが…」

あまりにも遅かったせいで、仕事は断られると思ったが
彼女は笑顔で言った。

「お待ちしてましたよ。ココ、分かりにくかったですよね!?電話してもらえれば迎えに行きましたのに。さぁ、中へどうぞ」

彼女の優しい笑顔と対応に悪い気はしない。

いや、むしろ好印象だ。

私は安心して促されるまま、彼女のオフィスへと入っていった。

小さな白いオフィス───

私は少し落ち着かず、周りを見渡していた。

何にもない…『白』だ。

まるで精神世界に居るみたいに、外とは対照的に静かで無の世界…

彼女は私の前に座り優しく言った。


「お話を聞かせてください」
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