だからキスして。
そう言うと佑樹はあたしを抱き寄せた。

「わかってくれよな。俺だって千波と離れるの辛いんだから」

「…うん…ごめんなさい…ガマンする…」

「一週間だから。ちゃんと毎日電話するし、メールだって出来るから」

「…ん…わかった…」

佑樹はあたしを上手く納得させる。
あたしは…わかったと言うしかなくなるんだけど。

不安でいっぱいで、それでもガマンするしかなくて、佑樹を送り出した後も泣き続けた。

佑樹がそばにいる気分になりたくて、さっきまで佑樹が着ていたパジャマを握りしめ

佑樹の匂いを探す。

佑樹のお気に入りの香水の香り。

それで少しだけホッとする。少しだけ落ち着いて眠りにつくけど
眠りは浅くて、すぐに目覚めるの。



ああ、まだ二時間しか経ってない。

このまま一週間、佑樹の夢を見ながら眠ったままで帰りを待てたらいいのになぁ…

佑樹は仕事柄か出張が多い。

手帳を開いて確認しただけでも月に半分くらいは帰らない。

だから余計不安になるのかもしれない。

佑樹の部屋は無機質な感じがして、あたし独りだと佑樹なんて住んでないみたいなんだもん。

「佑樹ぃ…早く帰ってきてね…」
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