だからキスして。
一瞬で楽になれる。



そんな言葉が媚薬のように頭の中に浸透していき、無我夢中で窓を開けようとした。



ガチャガチャガチャ!!



どうしても開かない窓。鍵はあいてるのに。

「…っ…!!!!どうしてよ…!?」

窓を叩いて、おでこを擦りつけた。

楽になりたいの
楽になれると思ったのに

床に座り込んで上を見ると、もう一つ鍵がついていた。

佑樹が…取り付けて行ったんだわ…

開け方がわからない。

あたしの精神状態を知ってるから、別の鍵を取り付けたのかもしれない…

その場にうずくまって耳を塞ぎ、あたしは泣くしかなかった。

「うわぁぁぁん!!」



なんにも聞こえない

暗い闇。

佑樹の声すら思い出せないの







 バタン…ガタガタ…

「…!?千波…っ!!」

人の声がして、あたしは目を開けた。

いつの間にか太陽の光が部屋に射し込んでいて、そのアカリと共に佑樹の顔が見えた。

「…佑樹……おかえり…」

「千波、ゴメン。大丈夫か?寂しかっただろ」

あたしを抱き上げ、心配そうにあたしの顔を覗き込む佑樹。

「もう大丈夫…佑樹が帰ってきてくれたから…」

あたしは彼に抱きついた。
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