だからキスして。
「はっ…!?」

警察と名乗った男は、佑樹に何か書かれた紙を見せていた。

「未成年者の長期監禁容疑です。わかりますね?」

起きて佑樹の後ろで聞いていたあたしも、耳を疑った。

なに…言ってるんだろう…この人達

佑樹は手を広げて、あたしを庇うように後ずさりした。

「いや、何のことだか…コイツは…」

「宮下千波さんですね?身体は大丈夫?」

何故あたしを知ってるのか
何故警察が来るのかワケがわからない。

あたしは何も答えず、佑樹の背中にしがみついていた。

「えーと、5時32分─黒部佑樹逮捕」

数人の男が佑樹の腕を無理矢理引っ張って、その手に手錠をかけた。

「えっ、ちょっ…」

「佑樹に何するの!」

「離せ!!」

「早く車に乗せろ」

暴れて抵抗する佑樹をお構いなしに連れていこうとする男達。

「あたしは監禁なんかされてない!佑樹を連れて行かないで!」

佑樹を取り戻そうとするあたしを女性警察官が引き止める。

「離して!」

何とかその手を振り払い、黒い車に乗せられようとしてる佑樹の所まで走っていって

あたしは佑樹にキスをした。

「愛してる…」




それが佑樹との最後のキスになった。
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