だからキスして。
彼女に触れてる部分と

オレの動物的で本能的な部分に血が流れ込んでいた。

ドクン
ドクン

彼女が上目使いでオレを誘って、ゆっくり目を閉じた。

慣れた感じでキスを要求している…

この誘惑に勝てそうもない。

キスしてしまったら…オレは────











   『パパ!』








急に娘の声が聞こえた気がして、ハッとした。

そしたら催眠が解けたみたいに目が覚めて、彼女の胸に触れていた手をパッと離した。

オ…オレ、何してた?!

ってか、何しようとしていた?!

明るい照明の下。
小松さんの胸は露出したままで、まだオレを誘惑している。

オレは慌てて彼女のブラウスを閉じた。

「牧野さん…?」

小松さんがオレの行動を、不思議そうな顔をして見ていた。

「…ゴメン」

「あ…ごめんなさい!こんな場所じゃ嫌ですよね?やっぱりホテルに──」

「違うんだ。場所なんてどこでも…いや、そうじゃなくて!」

「?」

「オレ、君とはそういう関係にはなれない」

「…あたしの事、やっぱり嫌いなんですか?」

「好きとか嫌いとかじゃなくて…オレには家族がいるから」

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