だからキスして。
「髪が長くて…それから細い身体。好きなら当然、沙也佳の身体を手に入れたかった」

あたしは彼の肩に手を置いた。

「あたしの目を見て…真っ直ぐに、彼女を想って」

「沙也佳…」

彼があたしの瞳の奥を覗き込む。瞳の奥には自分の姿が映っているはずだ…さらにその奥には────

「あたしを彼女だと思って。彼女は今、貴方の目の前に立って…サヨナラを言うつもりよ」

「沙也佳…」

「逃げずに想いを伝えて。貴方の願いはきっと叶うから…ちゃんと彼女を忘れて、過去の恋にする事ができるから…」

「本当か…?」

「信じて。心の底から信じて。ねぇ、目を閉じて…」

彼はあたしの言う通りに目を閉じた。

「目を開けると…彼女が居る。3,2,1!」



   パチン!







カウントが0になるのと同時に指を鳴らした。
彼はゆっくりと目を開ける…

『お兄ちゃん…』

「沙也佳…沙也佳!」

彼はあたしを抱きしめた。その腕は震えて、涙声になりながら想いを伝えた。

「好きになってゴメン。こんな想い…キモいよな?迷惑かけてゴメン。それでも…一生、大切に想ってる。
お前は僕の大切な'妹'だから」
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